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× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 主にスポーツなどで使われる言葉だが、人材を採用する時のポリシーとして、BPAという考え方がある。 BPAは【Best Player Available】の略で、「可能な限り最高の人材を採用する」という意味だ。これを聞くと、「なぜそんな当たり前のことがポリシーになるのか?」と不思議に思われる方がいるかもしれないが、このBPA、実は問題の多いやり方なのである。 外資系流通A社の年間の採用人数は、すべて本国の計画に沿って決められている。日本法人トップM氏は、順調な業績を背景にスタッフを増やそうとしているが、慎重な本国からブレーキがかけられている状況だ。 A社が必要としている人材は多岐にわたっている。システム・財務・営業・法務・渉外・企画…、ほとんど全ての部署が人員を増やして欲しいとトップのM氏に要望を出していた。 M氏は、自身がもともと人事畑の出身ということもあり、自ら採用業務に積極的に携わっていた。そして、M氏が考える採用方針がBPAだった。 M氏がBPAにこだわるのは、彼が大手企業出身で、有能なスタッフを持つことに慣れていたから。そして、A社の前の会社で同様のポリシーを貫いて成功したからだ、とA社内では言われている。 出来るだけいい人を採用しようと考えるのは、ひとつの採用枠に関していえば、常に正しいだろう。しかし、採用人数に上限があり、各ポジションに人員を配置する時はその限りでない。 つまりM氏は、スキルが高く、人柄のいいSEが二人いると、両方に内定をだしてしまうのだ。逆に法務に人材がどれだけ必要でも、基礎能力が低いと判断されれば決して採用に踏み切らない。さすがに同じ職種10人を同時に内定にすることはないが、あくまで基本はBPAなのである。 一昨年の採用で、M氏はもっとも人が足りていない経理をよそに、営業・人事・企画で複数の内定者を出した。昨年は特に増員の必要のない営業(業務改善)に、知り合いの紹介で面接した人物を受け入れてしまった。 採用した人はみな優秀で、仕事は出来る。マンパワーが十分な部署は劇的に業務改善が進み、A社の業績も全体として伸びている。しかし、キャリア採用で補充がなされない部署は、忙しさが雪だるま式に増えていった。 今年1月、本国から採用枠の通知が来ると、A社の人事・部門マネージャー、そして我々は、M氏に内緒で会議の場を持った。必要な部署に、いかに重点的に採用を行うかを話し合ったのだ。各部署のニーズを数値化し、職種毎に段階的な選考スケジュールを組んで、現在までに法務・企画・営業で補充が進んでいる。 だが、さすがにM氏の目もフシアナではない。ここに来て、人事が職種の優先順位に基づいて採用を行っていることに気がついた。 釈明に追われたのはまだ若いA社人事担当。 「どうしても人が必要という声がいくつかの部署からあったものですから…」 「その間に、優秀な人材を採用するチャンスを逃がしてしまったかもしれない」 「それはそうですが、現場の声を無視し続けるわけにもいきません」 「まあ、私も今年は他の仕事で、面接に時間がとれないので仕方ない。思うようにやってみろ」 そう言って、最後はM氏も担当者に仕事を任せる決断をしたのだった。 その担当者が部屋から去って、M氏が我々に対してこう言った。 「私はBPAの信条を捨てるつもりはないよ」 どう答えていいのか分からず、我々が困った顔をしているとM氏は笑みを浮かべた。 「こうやって私の足りないところを補ってくれるのは、優秀な部下を持っているからだよ。並の人材で満足していたら、飲み屋で陰口をいうだけで動こうとはしない。今、まさに私がBPAに基づいて採用を行ってきた成果が出ているわけだ」 なるほどと言うべきか、モノは言いようというべきか…。ベスト・プレイヤー・アベイラブル、M氏の人事戦略は続いていくようだ。 PR |
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